マルジェラからは様々なパターンの配色切替ニットが継続的に展開されていますが、こちらはあまり見慣れないラグラン切り替えになっています。
ネイビーカラーはウール素材特有のメランジェ具合が際立っていてとても綺麗。
ブルー・グレーはマルジェラ特有の微妙な色合いが堪りません。
ミリタリーグリーンはネイビーとブルー・グレーに上手く調和しています。
最近はどのブランドも「これでもか!」というくらいカラーコントラストの付いた主張の強い切り替えが多いですが、遠目で気づかず近づいて分かる落ち着いた配色はとんでもなく好みです。
品質タグは代理店がオリゾンティ時代のものです。
オリゾンティのタグがつくのは99ss、99aw、00ssの3シーズンのみ。
タグからはシーズン判別ができませんが、ウールも使われたやや厚手のニットなので99awのものでしょう。オリゾンティタグが付く唯一のAWシーズンです。
追記:99awとしていましたが、信頼出来る情報を頂き、正しくは00ssのアイテムです。
また、合わせて目につくのは「MISS DEANNA」の名前。
ネット上に落ちているブログや記事を読んでみると、どうやらこの「MISS DEANNA」はテキスタイルに強く、初期のマルジェラで主にニットに精力を注いでいたとのことです。
「KOKONOE」タグのアイテムにも「MISS DEANNA」がつくこともあるようなので、2001年頃までは彼女の名前が冠されるのかもしれません。
(「KOKONOE」タグは00aw, 01ss, 01awの3シーズンのみの展開のようです。)
さて、少しもったいぶりましたが、このニット最大の特徴は「単に色合いを変えただけでなく、素材も切り替えているところ」です。
品質タグ写真のとおり、素材は「ウール46%、コットン54%」ですが、なんとこれは「コットン・ウール混」を表しているのではなく「コットン生地とウール生地の表面積」を表しているようです。
①ネイビー=ウール素材
②ミリタリー・グリーン=コットン素材
③ブルー・グレー=コットン素材
最初見たときから違和感を覚えていた、肩部分の中途半端な位置での切り替えですが「ネイビーカラー部分=ウール素材=全体の46%」。
すなわち、ちょうどニット表面積の46%で切り替えるとこの位置になるのでしょう。
(そこまで厳密な表示ではないと思いますが笑)
こういう自然な歪みなんかはマルジェラ好きとしては一向に構いません。
コットンも肉厚で、初期のアイテム特有のトロトロした肌触りです。
ヘルムートラングのニット もそうでしたが、90年代が全盛期のブランドの初期コレクションアイテムは、見ていてジンワリと満足感がこみ上げてくる事が多いです。
メンズライン発足して間もないシーズンということもあり、アーティザナルラインに限らず⑩ラインもこうした実験的で面白い作り込み、コンセプチュアルなアイテムが多いと思います。
当時を体感していない僕のような世代にとっては、こうした面白いアイテムが消費され埋没していかないことを願うしかありません。
これに関しては、LAILA TOKIOから共感できるメッセージが発信されていたので、全文を転載させていただきました。
(問題がありましたら削除します。)
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シーズンごとに新しい服やスタイルを提案することが、ファッション業界では長い間、あたかもルーティーンのように信じられてきました。
しかしそれだけでは、服を着る/見る人を幸せな気持ちにさせることができないことに、誰もが気がつき始めています。
「新しい」ということが最大の価値のひとつであったファッションにおいていま、揺り戻しが起こっているように感じるのは私たちだけではないはずです。
ヴィンテージやアーカイヴと呼ばれる過去の創作に対しての敬意を私たちが持ちえるのは、そこに現在の出発点を見つけると同時に、未来への想像力を感じるからに他なりません。
過去をひもとき現在につなぐこと。二つの間の時の経緯を慈しみながら、関係性に想いを馳せるとき、記憶は解き放たれ、次代への指向を持ち始めます。
数多くのデザイナーや服が消費され忘れ去られていきます。しかし決して忘却してはならないことが、そこにはあります。創造の背後にある思想や美への意識です。
”ファッション”という言葉をまとった思想やアートを再び、世の中に伝えることができるなら。その思いが私たちをいまも突き動かしています。
ファッションとは何か?を語る前に、ファッションは人にどんなインスピレーションを与えられるのか?から始めるべきだと私たちは考えます。
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LAILA TOKIOのクリエイティブ・ディレクターであるhashiura氏はBRUTUS,2016年10月号の「ファッション転換期を迎えた今、彼らの考えていること。」でも印象的なコメントを残しています。