こちらは革靴の愛好家でいらっしゃる椎名氏からお譲りいただいた90年代の旧エドワードマイヤーです。
失礼ながら、エドワードマイヤーという靴メーカー(ブランド?)を、これまで僕は知りませんでした。
椎名氏は自身でお集めになった貴重な靴たちを不定期でオークションサイトに出品されておりますが、その一品一品に添えられたコラムに強い想いが込められています。購入せずとも、革靴好きな方は是非読んでみて下さい。
かくいう自分もそのコラムが購入のきっかけになりました。
(旧エドワードマイヤーについては、是非、椎名氏のコラムを読むことで知るのが一番良いと思います。したがって、このブログでは素人目線ではありますが、プロダクト自体にフォーカスします。)
さて、靴に話を戻します。
この靴、パッと見はそこまで主張するものはないかもしれませんが、革靴の歴史上最高峰のボックスカーフが使用されています。
写真では伝わりにくいかもしれませんが、しっかりとした厚みのある革、味わい深い皺と透明感のある光沢とがあり、革靴好きな方は目につくと思います。
最高峰と言えば、カールフロイデンベルグ製のボックスカーフです。(椎名氏の紹介ページでは本プロダクトがカールフロイデンベルグ製であることは明記されていなかったかと思いますが、90年代の旧エドワードマイヤーはカールフロイデンベルグ製が多いようです。少なくとも歴史上最高峰の革が使われていることは間違いないとのこと。)
カールフロイデンベルグ社は、革靴が好きな人なら聞いたことがある単語だと思います。
現在は廃業になっていますが、かつてドイツのタンナーとして世界最高峰と言われた会社です。
今でこそ、様々なカーフ(主に高い品質のもの)が『ボックスカーフ』と呼ばれていますが、元々はここカールフロイデンベルグ社の革の固有名詞だったとも。
カールフロイデンベルグ製が何故それほど重宝されるのかと言うことですが、偏に『今現在、作ることができない最高の革』だからだそうです。
椎名氏曰く、カールフロイデンベルグ社が廃業するまでは、限られた顧客に対し最高を追求した革を供給できていた。
しかしながら、環境配慮による薬品排出規制や、職人の賃上げ・技術継承問題、需給バランス、販売環境の変化により、最高峰の革を生産するのが困難になっていったそうです。
僕も少ないながら80年代〜90年代の革靴をいくつか所有しているので、一昔前の革質の良さは素人ながら多少は理解しているつもりですが、この靴はそれらを超えるクオリティを感じます。
(もちろん、一昔前の靴だから必ずしも革質が良いわけではないと思います。)
実物は非常に丈夫であることを実感できる、厚い革です。
また、(素人判断ではありますが)革となる前の本来の牛の皮筋も見え、革(皮)本来の表情を残した仕上がりになっています。
数年前に購入した某イギリスメーカーの革靴のように、薄くて表面加工された革とは比べものにならない存在感です。
厚くて丈夫な革だからこその、大きく波打つ皺がプレーントゥを装飾してくれています。
この大きく波打つ皺、只者ではありませんよね。そこいらの靴でこんな皺は見たことがありません。
相当丈夫な革にしか現れない皺だと思います。
ソールもやや厚めで見た目は重そうですが、実物はかなり軽いです。
また、良い革にはよくあることですが、厚さに反して、柔らかさと透明感のある光沢があります。
外で撮った一枚。
太陽光の下だとまた違う表情です。
この靴に限っては、ワックス成分やロウ成分の入っていないデリケートクリームのみで仕上げていますが、この透明度の高い光沢。空の青が映り込んでいます。
尋常ではないオーラです。
外羽に縁取られたダブルステッチによるデザインが非常に上品です。
これもこの靴のお気に入りポイントの一つです。
ちなみに、旧エドワードマイヤーはタン裏に制作年代も印字されています。こちらは、1994年に作成されたものです。
ラストはエドワードマイヤーの「ペドフォームラスト」です。
少しネットで調べてみると、どうやら矯正靴が起源となっているようで、履いたときに足のアーチをキープするような形になっています。
具体的には、踵から足中頃の土踏まずにかけてかなり絞られた形であり、かつバナナカーブを描いています。
そこから足の指にかけてぐっと広がっていく型です。
この角度だと土踏まずの部分がグッとくびれて捻れているのがわかると思います。
専用のシューツリーを見ても特徴がでています。(このシューツリーも現在は廃盤となっているらしく、貴重なようです。この貴重なツリーも靴と合わせて譲っていただきました。)
ちなみに、シューツリーは様々持っていますが、純正品以外でこのペドフォームラストに合うものはありませんでした。
革靴に引き込まれるキッカケとなったエドワードグリーンのバークレー(旧202ラスト)と並べてみました。
グリーンのサイズはUK7D(実感UK6-6.5)、マイヤーはUK6Eですが、アウトソール長はほぼ同じです。
ただ、マイヤーのほうがコバを張り出しているので、当然ながらその分だけサイズ感は小さいです。
革質はグリーンの方が繊細な印象です。所謂、世間一般に言われるアニリンカーフそのものといった印象。
コバも張り出しが抑えられていて、ドレス感があります。
一方、マイヤーはかなり力強い印象を受けます。かと言って、透明感のある光沢はあり、エレガントな雰囲気を損なってはいないのが、流石ドイツ王室御用達。
プレーントゥーということもあり、様々なシーンで使える靴です。
シューツリー型の差による影響もありますが、インサイド・アウトサイド共に旧マイヤーの方がメリハリが付いています。
色んな角度から見た時に違和感を感じる捻れ方をしていて、旧マイヤーと比べるとエドワードグリーンのラストがずいぶん単純に見えてしまいます。
履いてみると、独特の捻れた型で、矯正靴ということを感じられます。
現状、ややタイトフィットですが、どちらかというと気持ちの良い締め付けで、履くたびに馴染んでいます。
椎名氏からは、1年かけてジャストフィットになるのではないかとアドバイスをいただいており、少しずつ履く時間を長くしながら大事に大事にアジャストさせています。
この靴とは長い長い付き合いになりそうです。
履いたときの独特なくびれが、非常に上品な佇まいだと思います。