お気に入りのマルタン・マルジェラのニットの中でも、少し珍しいモックネック・プルオーバー。99awシーズンのものです。
99awはメンズラインである⑩としてのawファーストシーズンですから、かなりマルタンの想いも強く反映されているものと思います。
マルタン・マルジェラの大定番アイテムといえばドライバーズ・ニットで、メンズライン立ち上げから継続的にリリースされていますが、ごく初期にはこのモックネックタイプもリリースされていたようです。
リリースシーズンがごく初期(というより、99awのみ?)に限られているためか、あまり知られていないアイテムだと思います。
特徴となるのは当然ながらモックネック部。
一般的なモックネックよりもはるかにボリューム(高さと厚さ)があります。
これだけボリュームのあるモックネックも近年はあまり見ないのではないでしょうか。
個人的に首元はかなり重要なポイントなので、どんなコーディネートでも目がいくのですが、ペラっとしたモックネック(単体ではペラっとしていなくとも、アウターと合わせると形が崩れるものを含む)は安っぽさを感じてしまうことも。
コートに合わせてもこのとおり綺麗に馴染み、ボリュームがアクセントになります。(写真は色違いの黒色のものです。)
タートルまで高くなく、モックネックの中では高めの絶妙なバランスが本当に良い。
後ろからのシルエットだとよく分かりますが、特有のボックスシルエット。男らしいシルエットですね。
とはいえ、時代に左右されない普遍性のあるシルエット・バランスだと思います。
(なお、初期はアイテムによっては極端なボックスシルエットであることも多く、今の時代で着るには着丈が短いものが多いので注意した方が良いと思います。)
参考まで、このアイテムはMサイズで、174cm,59kgの僕が着るにはちょうど良いサイズ感で、着丈が短いということもありません。
色はカーキやオリーブと言える色ですが、どこか土臭い雰囲気もあり、(リスペクトを込めて)オリーブドラブというべきカラーでしょうか。マルタンに特有の色使いと言えると思います。
このオリーブドラブに限らず、初期はヴィンテージライクな色合いがチョイスされていることが多いです。
なお、このアイテムはブラックも展開があります。アイテムとして中々出回らないこと、タフで使いやすいアイテムであることから、色違いで回収してしまいました。
真冬でもこのニットを着ていればアウターも不要!とまでは言えませんが、薄手のアウターでも問題ないくらい。
この分厚さも特徴的です。
ドライバーズニットだと、襟が高いためにチクチクする等の声がよく聞かれますが、このアイテムはそんなことはありませんでした。
むしろ首元の肌触りは良い気がします。
これも以前に01awウールニットの記事でも書きましたが、この頃(ミス・ディアナ監修)のニットはタグに単に「ウール」ではなく「メリノウール」と素材を具体的に明記しているのが大きな特徴(これって普通のことですか?)で、素材への拘りが垣間見えます。
20年以上前のアイテムながら、殆ど毛羽立ちや毛玉が出ないのは本当に凄い。
UNIQLO UでもAWでモックネックニットがリリースされていましたが、モック部のボリューム、シルエット・素材感など、少しずつ違いがあり、着用時の印象や雰囲気が全く異なります。
UNIQLOの方がスタイリッシュです笑
映画「In His Own Words」でも言及がありましたが、メンズ立ち上げ当初のアイテムは特に「ワードローブ」という言い方に拘っていたようです。当時の雑誌のインタビューでもその旨記載があります。
パッと見で特出した主張はないものの、ワードローブと呼ぶにふさわしい、オーセンティックな魅力が多分に詰まったアイテムだと思います。
ここからは、01awのニットと恒例の比較をしてみます。
左(ネイビー)が01aw、右(オリーブドラブ)が99awです。
01awもそれなりの厚さがありますが、99awは更に厚さがあります。
ただ、厚いながら着ていても熱苦しくならないのは素材の良さなのでしょうか。
畝の太さや生地の表情も違います。
01awは「ヴァージンウール」、99awは「メリノウール」です。
01awは毛羽立ちが殆どなく、それに伴って光沢もあります。また、肌触りもどこかドライな感じです。
一方、99awは表面に僅かな毛羽立ちがあり、これによるふんわり感、肌触りも暖かさがあります。
同じウール素材でも比べれば明らかな違いがあります。同じニットといえど一つ一つ使い分ける拘り、本当に感服します。
00awのモールスキン素材マックイーンとスクエアトゥブーツに合わせるのが個人的な定番です。
土臭いミリタリー(リスペクトを込めてオリーブドラブ)のニット。
同じく土を連想する”モグラの皮”、モールスキンの名がついた光を吸い込むような暖かみのある黒のパンツ。
木や植物から抽出されたタンニン鞣しのナチュラルカラーのブーツ。
全体としてコントラストはあるものの、個人的にはこの先40歳でも60歳でも廃れない、リアルクローズ(これもリスペクトを込めてワードローブ)として成立する色の組み合わせだと思っています。