マルジェラの中で特に人気のあるシーズンと言えば、2004〜2005年頃を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
HUGEに掲載された野口強氏による2004aw⑩コレクションはあまりに有名です。
自身も好きなアイテムの多い2004awの中から、アーティザナルのニットをピックアップしてみました。
この再構築ノルディックニットも04awシーズンのものです。
ネットで検索をかけると、当時のルックにも掲載があります。元にした古着の柄にかなり幅があるようですが、見たところ大きく分けてグレー・ベージュ・ブラウンの3色のいずれかをベースカラーにしているようです。
余談ですが、H&Mコラボでもこのアーティザナル・アイテムは復刻されていましたね。コンセプトだけで、別物と見た方が良さそうですが…
ずっと欲しいと思っていたアイテムの一つですが、人気アイテムなのか個体数が極端に少ないのか、これまで二次市場に出回ることがほとんど無かったと思います。
そんな中で一番欲しかったブラウンベースの個体に飛びついてしまいました。(後から知りましたが、ブラウンベースは弾数が少ないようです。)
運良くファーストオーナーから譲って頂いたのですが、当時の伊勢丹で顧客向けに開催されたアーティザナル展示会(販売会)にて購入したものだそう。
当時は顧客向けの特別なイベントも多々あったようですね。本当に羨ましい限りです。
この個体は配色が絶妙だと思います。
このニットは色のコントラストをつけた個体が多い印象ですが、手に入れたこの個体は全パーツがトーンの合ったブラウン系のカラーで統一されていて、主張が強過ぎないのが好みに合致しています。
後述しますが、2種類のニットを元にした個体が殆どの中(というよりも、今まで2種類のものしか見たことがない中)で、この個体は恐らくは3種類のノルディック柄ニットを元にしていて、特別なアーティザナルの中でも特に贅沢かつ特別感があります。
1枚目: チェスト部
2枚目: ボディ部
3枚目: アーム部
通常は「ボディ部」と「チェスト部+アーム部」で2種類のニットを使い分けていますが、前述のとおりこの個体は全部位で3種類のニットを使い分けています。
タグにはウールと表記がありますが、3種類それぞれで素材感はバラバラです。
チェスト部はモヘヤのような繊維も含まるなど、本当にウールだけ?と思う特徴もあります。
完全に別のプロダクトをドッキングしているので、元の素材感の違いもデザインとしての主張になっています。
ボディ部はヴィンテージならではのローゲージで温かみのある風合い。
メランジェな色合いも堪りません。
タグには謎の「melange」が追加されていますが、上述のウール以外の素材も含まれていることをザックリと表しているのでしょうか。
これも無理やり感(=特別感)があります。
チェスト部は大胆に切り替え、それも裏返してドッキングされていて、このアイテム最大のデザイン主張になっています。とはいえ、あまり違和感なくドッキングされているのも面白いところですよね。
また、デザイン以上にこの切り替えによる歪なシルエットもこのアイテムの特徴だと思います。
伝わらないと思いますが、チェスト部は硬い生地、ボディ部は柔らかい生地と硬さが違うので、その差で肩〜腕周りのシルエットが歪な感じになります。
ブログの中で何回か書いていますが、アーティザナルはこの歪な雰囲気で好奇心を湧かせてくれるのが魅力です。
というか、この歪な雰囲気が無いとアーティザナルではないとさえ考えるくらいには心酔してきました。(その分、着こなしは難しいのですが)
アーム部の切り替えも左右で長さや太さが違います。
こちらもチェスト部同様、アーム部もまた生地の柔らかさが異なるため、単に長さや太さの違いだけでは生まれない歪なシルエットになっています。
ちなみに、同一のニットから切り取ったなら同じとなるはずのアームの太さが何故異なるのか。
袖口は編み直してある可能性もありますし、同じニットをサイズ違いで用意していた可能性もあるのでしょうか。
普通そこまでするのか?と思いますが、アーティザナルなのでそこまでするかもしれませんね。
サイズ表記は2です。174cm, 59kgの僕がややオーバーサイズ気味で着用できます。
アーティザナルは個体によってサイズ感がマチマチなので、今風でいい具合のオーバーサイズで手に入ったのは運が良かったと思います。
アーティザナルは必ずサイズ問題が出てくるので、ある意味では博打みたいなところがあります。
だからこそ、良いサイズを引けたときは喜びも一入です。
このアイテムは裏返して見るのがまた面白いです。
ノルディック柄ってこんなに手間のかかりそうな編み方をしているんですね。
各パーツの繋ぎ合わせは手作業によるものだと分かります。
結構ガチガチに縫い付けられているのはビックリしました。この境目からほつれるようなことはないでしょう。
そもそもニット同士ってそんなに簡単に縫い合わせることができるのでしょうか?
アーティザナルアイテムはフランスのアトリエで一点一点手作業により作られているそうですが、個人的にはこの手作業から、メゾンの強い想いを感じました。
余談ですが、この手のノルディックセーターはホールガーメントみたいにシームが無いようです。裏表が混在しているニットなので、裏返して見ているうちに気づきました。
参考リンク:アイスランドの伝統ニット「ロピーセーター」の特徴を解剖-ニッティングバード
元の古着の特徴や魅力も伺い知れるのもアーティザナルの魅力であり、面白いところです。