マルテン・ブログ

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気に入ったものを自己満足で挙げていきます。

Martin Margiela ⑩ 00ss マルチカラー・生地切替ニット

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✳︎2017年に投稿した記事の写真や文章を更新して再投稿しています。
 
マルタン・マルジェラの中でも特に気に入っているマルチカラーのラグラン・ニットです。

マルジェラからは様々なパターンの配色切替ニットが継続的に展開されていますが、こちらはあまり見慣れないラグラン切り替えになっています。
 
また、後述しますが、このニットは単に色だけでなく生地すらも切り替えているなど、特に拘った作りです。
 
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主張を抑えた暗めのネイビー×ミリタリー・グリーン×ブルー・グレーという好配色。
 
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ネイビーカラーはウール素材特有のメランジェ具合が際立っていてとても綺麗。

ブルー・グレーはマルジェラ特有の微妙な色合いが堪りません。

ミリタリーグリーンはネイビーとブルー・グレーに上手く調和しています。


最近はどのブランドも「これでもか!」というくらいカラーコントラストの付いた主張の強い切り替えが多いですが、遠目で気づかず近づいて分かる落ち着いた配色はとんでもなく好みです。
 
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品質タグは代理店がオリゾンティ時代のものです。


オリゾンティのタグがつくのは99ss、99aw、00ssの3シーズンのみ。

タグからはシーズン判別ができませんが、ウールも使われたやや厚手のニットなので99awのものでしょう。オリゾンティタグが付く唯一のAWシーズンです

 

追記:99awとしていましたが、信頼出来る情報を頂き、正しくは00ssのアイテムです。


また、合わせて目につくのは「MISS DEANNA」の名前。

ネット上に落ちているブログや記事を読んでみると、どうやらこの「MISS DEANNA」はテキスタイルに強く、初期のマルジェラで主にニットに精力を注いでいたとのことです。

「KOKONOE」タグのアイテムにも「MISS DEANNA」がつくこともあるようなので、2001年頃までは彼女の名前が冠されるのかもしれません。
(「KOKONOE」タグは00aw, 01ss, 01awの3シーズンのみの展開のようです。)

 

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さて、少しもったいぶりましたが、このニット最大の特徴は「単に色合いを変えただけでなく、素材も切り替えているところ」です。

 

品質タグ写真のとおり、素材は「ウール46%、コットン54%」ですが、なんとこれは「コットン・ウール混」を表しているのではなく「コットン生地とウール生地の表面積」を表しているようです。

 

 ①ネイビー=ウール素材

 ②ミリタリー・グリーン=コットン素材

 ③ブルー・グレー=コットン素材

 

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最初見たときから違和感を覚えていた、肩部分の中途半端な位置での切り替えですが「ネイビーカラー部分=ウール素材=全体の46%」。


すなわち、ちょうどニット表面積の46%で切り替えるとこの位置になるのでしょう。

(そこまで厳密な表示ではないと思いますが笑)

 
同じシーズンでベストもリリースされていたようで、品質タグの素材表示がコットン80%、ウール20%となるなど、切り替え面積も違うようです。
 
 
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コットン部分とウール部分で生地の伸び方が違う(コットンは使いこむうちに伸びる)ので、平置きするとシルエット全体が若干歪んでいる気がします。
首元を見ると少し分かるでしょうか。
 
長期に着込むうち、独特のシルエットになっていくのではないかと思っています。
こういう自然な歪みなんかはマルジェラ好きとしては一向に構いません。
(プロにクリーニングをお願いしていることもあり、歪みは補正されて戻ってきます。)
 
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コットンは少々の毛羽立ちがありますが、素材がしっかりしているのか、色落ちや酷い伸びも出ず、かなり良いコンディションを保てています。
 
コットンも肉厚で、初期のアイテム特有のトロトロした肌触りです。
 
なお、クリーニングは毎シーズンそれなりの値段を出しています笑

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ちなみに、このニットは色違いでベージュのグラデーションのものもあったようです。
こちらも凄くいい色加減と組み合わせだと思います。
 
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このほか(おそらく同時期に)切り替え方や配色の異なる個体もあるようです。
いずれにしても堪らない色使いです。
 
 
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ヘルムートラングのニット もそうでしたが、90年代が全盛期のブランドの初期コレクションアイテムは、見ていてジンワリと満足感がこみ上げてくる事が多いです。
 

メンズライン発足して間もないシーズンということもあり、アーティザナルラインに限らず⑩ラインもこうした実験的で面白い作り込み、コンセプチュアルなアイテムが多いと思います。


当時を体感していない僕のような世代にとっては、こうした面白いアイテムが消費され埋没していかないことを願うしかありません。

これに関しては、LAILA TOKIOから共感できるメッセージが発信されていたので、全文を転載させていただきました。
(問題がありましたら削除します。)
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シーズンごとに新しい服やスタイルを提案することが、ファッション業界では長い間、あたかもルーティーンのように信じられてきました。
しかしそれだけでは、服を着る/見る人を幸せな気持ちにさせることができないことに、誰もが気がつき始めています。
「新しい」ということが最大の価値のひとつであったファッションにおいていま、揺り戻しが起こっているように感じるのは私たちだけではないはずです。
ヴィンテージやアーカイヴと呼ばれる過去の創作に対しての敬意を私たちが持ちえるのは、そこに現在の出発点を見つけると同時に、未来への想像力を感じるからに他なりません。
過去をひもとき現在につなぐこと。二つの間の時の経緯を慈しみながら、関係性に想いを馳せるとき、記憶は解き放たれ、次代への指向を持ち始めます。
数多くのデザイナーや服が消費され忘れ去られていきます。しかし決して忘却してはならないことが、そこにはあります。創造の背後にある思想や美への意識です。
”ファッション”という言葉をまとった思想やアートを再び、世の中に伝えることができるなら。その思いが私たちをいまも突き動かしています。
ファッションとは何か?を語る前に、ファッションは人にどんなインスピレーションを与えられるのか?から始めるべきだと私たちは考えます。
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LAILA TOKIOのクリエイティブ・ディレクターであるhashiura氏はBRUTUS,2016年10月号の「ファッション転換期を迎えた今、彼らの考えていること。」でも印象的なコメントを残しています。

Martin Margiela ⑭ 07aw ウール・アナトミックパンツ

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マルジェラの定番パンツの一つであるアナトミックパンツ。

マックイーンパンツと並んでブランドを代表するパンツですが、2010年代前半を最後にリリースされなくなってしまいました。

 

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マックイーンパンツは⑩ラインから、アナトミックパンツは⑭ラインからリリースされることが多かったと思います。

(当然、⑭ラインが出来る以前の初期アナトミックパンツは⑩ラインからリリースされています。)

 

腰付近にタグがつき、バックスタイルで白い糸が見えるものが多いと思いますが、07awは左腰内側にタグが付いていて、外側からは見えなくなっています。

 

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アナトミックパンツの特徴は、裾付近でアウトサイドのシームが内側に入ってくること。

裾付近で生地の余りができてしまうので、畳むのが非常に難しいです。

 

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部屋撮りなので少々暗いのですが、着画を少々。

アウトサイドラインが裾付近でキュッと内側に入ってくる特徴が伝わるでしょうか?

 

マックイーンパンツとはまた違う、唯一無二のシルエットです。

 

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アナトミックパンツはコットン100%やコットンウール混など素材も様々ですが、この07awはウール100%のものです。

 

厚くはないものの、弾力のあるしっかりした生地で、アナトミックパンツの特徴である裾付近の余り生地がプルプルと動いて面白い。

個人的には、アナトミックパンツはウールの方がシルエットが綺麗に出ると思っています。

 

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色味も絶妙です。

カーキともブラウンとも言えるマルジェラお得意の微妙(絶妙)な色合いで、かつ近くで見ると薄らとチェック柄があしらわれています。

 

遠目に見えず近づいて見えるこの手の拘りには弱いです。

個人的にアナトミックのシルエットや雰囲気とピッタリで、とんでもなく好みの生地感です。

 

 

余談ですが、アナトミックパンツにもちゃんとイメージソース(コンセプト)があるそうです。言及はしませんが、この07awは生地感や色合い、柄も含めてそのコンセプトを体現しているのが嬉しいところです。

 

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最近、バーニーズNYのセールで購入したブラウンスウェードのショートブーツ(クロケットジョーンズのバーニーズ別注モデル)が相性抜群で、お気に入りの組み合わせです。

 

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加えて、11ssのエルボーパッチカーディガンとも色味や雰囲気の相性が良いので、春先・秋口にこの組み合わせを楽しみたいと思っています。